南会津 白身山、袴腰山 2010年4月3日

所要時間 5:24 林道起点−−7:36 尾根取付−−9:16 白身山 10:04−−10:56 林道−−11:09 小峠−−12:32 袴腰山 12:48−−13:15 1262m峰−−13:31 林道−−13:50 林道起点


 県境の帝釈山から北には長く伸びる尾根があり、その途中には「白身山」という標高1700mを越える美味しそうな名前の山が存在する。そこそこ近いところに広域林道が通っており、もしかしたら無雪期でも藪漕ぎの許容範囲で山頂に立てる可能性があるが、残雪期の方が楽に登れるに違いない。今の時期はたぶん林道起点から除雪されていないだろうから、今回は林道歩きが長くなりそうだ。今回は麓から山頂まで水平距離が長く、尾根が複雑なので小峠付近まではショートカットしつつ林道を歩いた方が楽そうだ。

 西那須野塩原ICで降りて桧枝岐を目指し、木賊温泉の標識で左に入って広域林道入口に到着、予想通り林道は除雪されていないから、出発時から雪の上を歩くのは確定だ。気温はまだ高めで雪解け水が轟々と流れているが、雪質が悪いと林道歩きで疲れそうだ。予報では明日朝は平年並みの冷え込みが期待できるようなので、締まってくれるといいのだが。

 翌朝、起きると窓ガラスの水滴はカチカチに凍りつき、予報どおりの冷え込みだったようだ。外に出てスノーモービルが通った跡がある雪に乗ってみると全く沈まない。スノーモービルの重さで圧雪された効果はあるだろうが、少なくとも朝冷え込んでいるうちはスノーモービルのトレース上を歩く分には沈まず歩けそうだ。とはいえ、今回は長丁場で帰りは日中で気温が上がって雪がスカスカになるのは確実で、スノーシューを担いだ方がいいだろう。地形図を見る限りでは急な場所はなさそうだが、念のためアイゼン、ピッケルも持っていく。

林道起点。最初から除雪無し ほぼずっと雪の上を歩く

 出だしから雪に覆われた林道を歩き始めると全く沈まず楽に歩ける。スノーシューが無いと足が軽い。でも轍を外れるとズボっと潜る場所もあり、林道を外れて尾根に乗るとつぼ足ではきついかもしれない。

林道をショートカット ショートカット地帯はカラマツ植林
振り返ると袴腰山(右側のピーク) 再び林道に出た

 しばらくは直線状の林道が続き、カーブが連続する区間では斜面をショートカットする。思ったより雪が締まってつぼ足でも全く沈まず、少し傾斜がある斜面では靴のエッジでステップを切りながら気持ちよく上がっていく。この付近はカラマツ植林で無雪期の地面がどうなっているか分からないが、今は雪が積もっているので歩きやすいところを適当に選んで登っていく。林道を横切ってなおもショートカット、次に道路に出てからカーブまで林道を歩き、小さな谷の右岸側で再びショートカット。このまま谷沿いに登っていき傾斜が急になったら右に巻いて尾根を越えると再び林道に出られるはずだ。地形図からイメージされたとおりの地形を辿り、小尾根を乗り越えると眼下に林道が登場した。

この尾根に取り付いた 尾根取り付きから見た林道
締まった残雪たっぷりで歩きやすい レジ袋の目印

 少しだけ林道を歩いて次のカーブで尾根に取り付く。カラマツ植林帯でここも雪が締まってつぼ足でも全く沈まずグングン高度を稼げる。振り返ると139?m峰の向こう側に袴腰山が頭をもたげている。その奥には家向山から小沢山、山毛欅沢山の稜線が広がっていた。あちらもいい雪質だろうな。

地面が出ている場所もあった 標高1500m地点

 尾根を忠実に辿って高度が上がると植林が終わって会津らしいブナ林に変貌、青空に大きく枝を広げた姿はまことに力強い。標高1500mで尾根は水平となり、目の前に横長の斜面が現れる。登りではこいつを登るだけだが下りは直進しないよう要注意だ。今日のような好天時なら尾根を間違える心配は無用だが、先週のようなガスった状況では難しい場所だ。

尾根上はシラビソ ブナの緩斜面
ワイアーのかかったブナ 横木があるが腐って登るのは危険
ブナの緩斜面から見た稲沢山〜丸山(クリックで拡大)

 斜めに登りきるとシラビソが混じるようになる。この上もなだらかな稜線でどちらに進むのか一目で分かるような地形ではなく、地図を見て左に進路を取った。尾根が右に曲がると樹林が開け、緩斜面帯に大きなブナが点在した明るい雪面に出た。そのうち1本のブナには何本ものワイアーがかかっており、その昔に索道の支柱として使われた雰囲気だ。木登りの梯子代わりに横木が打ちつけられていたが、年月が経過して腐りかけており、これを利用して木に登るのは危険な状態だった。ここは北から東の展望が良好だ。

白身山が初めて見えた 雪の無い地面は笹が少なそう
切株 下りがいやらしい広い尾根
振り返ると会津朝日岳が見えた

 斜面を登りきり1555m肩に出ると右に明るいブナ林が続き1589mが出現し、いかにもそちらが主尾根のように見えるが、実際は左に続く尾根が正解だ。そちらの方向にはシラビソが続いている。だだっ広いピークなのでガスったらやっかいだ。左側が切れ落ちて雪庇が発達しており、右側の斜面を少し巻くようにルート取りした方が歩きやすい。この付近は積雪が少なく地面が見えている箇所もあったが笹は薄かった。たぶんシラビソ樹林が広がる稜線西側は日当たりが悪く笹が薄いと思われる。

 広い尾根を登ると尾根は右に屈曲、帰りは直進しないよう要注意箇所だ。これより上部の尾根は西側は暗いシラビソ樹林、東側は明るい落葉樹林と対照的な姿を見せている。雪庇は大きくなり稜線上から東側で大きくうねる箇所もあり、開けた雪庇上よりもシラビソ樹林中の方が歩きやすい。

雪に覆われた露岩 露岩の上
尾根西側は地面が出たシラビソ樹林 そのまま尾根西側を中心に歩く
露岩から見た北〜東の展望(クリックで拡大)
露岩から見た稲沢山〜古町丸山(クリックで拡大)
露岩から見た枯木山〜田代山
露岩から見た土倉山〜荒海山

 標高1700m付近で肩地形があり、肩先端が妙な形に雪が積もっていて尾根上を登ることができず左から巻いた。木にしては変だなぁと思ったら露岩に積もった雪だった。あまり大きな露岩出はないが周辺の樹林が開けており展望が良かった。地形図からは読み取れないが山頂までの間に微小なピークが2つあって山頂到着かと騙された。

この上が白身山山頂 白身山山頂。地面は2,3m下だと思う
山頂付近で唯一の目印。2007年5月26日 目印の場所はシラビソ樹林の中

 登りきるとその先は大きく下っていて、今度こそ白身山山頂だった。標識か目印の一つくらいあるかと予想したが、それに反して目印すら見えない。そういえばここまでの間で目印は全く気付かなかったなぁ。ここまで目印がない山というのも珍しい。半端な標高、半端な位置で注目されないのかもしれない。目印は1つくらいあるだろうと一番高い雪庇上を離れ、西側の樹林中をゴソゴソ探し回ったところ、赤い荷造り紐が巻かれた木を発見。日付は2007年5月26日で、僅かに雪が残っている場所があったかもしれないが尾根上は完全に藪が続いている時期だっただろう。無雪期に登る人がいるとは少し驚いた。いくら探してもこれ以外は目印は無かった。かのMWVもここには登っていないのだろうか。なお、下山後ネット検索をかけたら烏ヶ森さんの掲示板の常連さんの一人が白身山に登っており、その日付と一致していた。掲示板に数行だけ書かれた文章だったが、これ以外に白身山の記録は発見できなかった。私は雪庇上に突き出たダケカンバの幹に目印を残した。

 本日のメインイベントは終わったが、オプションの袴腰山が待っている。天気予報ではお昼くらいから雪の予報だが、今のところは好天が続いている。予報が外れてこのまま晴れ続けてくれるといいのだが。でも、そうなったら小出俣山に行かなかったのを後悔しそうだなぁ。

途中で見た唯一の目印 ブナの緩斜面から見た三岩岳

 帰りは林道に出るまでは同じルートを戻るし、天気が良くてずっと先の地形が見えるので多少地形が複雑でも地図や磁石を引っ張り出す必要が無く時間の節約になる。先週のあの緊張感とは正反対だ。下りでは体重+下りの加速度が加わるのでつぼ足では踏み抜くこともあるが、下りだから疲労は無い。林道に出ると新しいスノーモービルのトレースができているかと思ったら古いトレースだけで、今日は出動はないようだ。日中で気温が上がってもトレース上は相変わらず沈まず歩きやすい。

 この頃になると頭上は晴れているのだが左に見えている三岩岳方面に雲がかかるようになってきた。朝方はそこも快晴だったので天気予報通り下り坂らしい。さて、あの雲がここまでやってくるだろうか。やってくるとしたらいつごろだろうか。

小峠 子峠から西の稜線に入る

 小峠まで林道を歩き峠で左の稜線に入るが、スノーモービルのトレースを外れるとつぼ足では潜るようになり、今日はここまで出番がなかったスノーシューの登場だ。さすがに接地面積の差が大きいだけあって全く沈まなくなる。小峠周辺は小ピークが乱立し、どこが主稜線なのか判別しがたいが、樹林を通して1396m峰が見えているのでピーク群の右側を巻いてその方向に進んでいく。この辺は唐松植林帯だがどういうわけかほとんどの幹に蔓が絡んでおり、その多くが途中で切断されていた。たぶん蔓を放置するとカラマツを締め付け、枯らしたり変形させて木材としての価値が低下するからであろう。しかしこれだけの本数を処理するのも大変だっただろう。
 
1250m鞍部先の雪庇 尾根上は雪が消えていた

 1250m鞍部から登りにかかるところは雪庇がこちら向きに張り出した個所で、切れ目を狙って強引に稜線に上がった。稜線上は雪が消えて薄い笹が出ているが背が低くて密度も低いためスノーシューでも問題なく歩けた。それでもやっぱり雪の上の方が歩きやすいので、雪面が斜めになっていない個所では雪庇上を歩いた。
 
稜線東側は雪庇が残っていた 標高1330mで左に巻き始める
1320m小ピーク付近から見た袴腰山 1320m小ピークから見た1396m峰

 1310mを越えると傾斜が緩んで水平移動となり、再び傾斜が出て本格的な登りになったところで左に進路を変えて1396m峰を西から巻くことにした。これは当初から計画していたことで、このピークの西側は標高1300〜1330mが傾斜が緩いため楽に巻けると考えたのだ。スノーシューを装着しているので斜面をトラバースするのはややつらいが、急傾斜ではないので許容範囲だ。1320m小ピークを主稜線と間違えかけたが尾根の続きにピークはなく、ずっと右側に袴腰山が見えていた。ピークトラバースは天気が良く視界がえら得るときは問題ないが、先週のようにガスっているときには危なすぎて使えない手段だ。

鞍部より登りにかかる ブナに彫られた文字
まだまだ登る 針葉樹が現れると山頂一角が近い

 鞍部に下って最後の登り開始。まだ日差しはあるが上空には薄雲が広がりだし、三岩岳はすっかり姿を消して近くまで霧のようなモヤった塊が来ているではないか。あれは降雪に間違いなく、ここにやってくると雪が降り出す。雪の量によっては視界が無くなり下りのルート取りが難しくなりそうだ。小規模な雪庇が張り出して樹木が無い尾根東側を主に歩いたが、雪が切れる場所は尾根上の樹林を歩いた。

山頂東端の露岩 北側の高まりが袴腰山山頂
袴腰山山頂 袴腰山から北の尾根を見る

 最後に針葉樹の生えた露岩が登場、大した岩ではないが右から巻き気味に稜線に到達、その先は傾斜がなく平坦な尾根に変わっていた。最高点がどこだか判別しがたく、地形図を取り出して眺めてみたがやっぱり分からない。こういうときのGPSで電源を入れると露岩より北東と表示された。常緑樹帯を抜けて落葉樹の平坦な尾根を進み、たぶんここが一番高いところだろうと思える雪庇上に来た。GPSの表示は残距離20mほどなので誤差の範囲で、標識がないか見回したが目印さえ見当たらない。露岩付近は地面が出ていたがその他は雪に覆われ三角点は雪の下で確認できない。まあ、ここを山頂としてよかろう。

 けっこう疲れたので山頂で休憩したかったが、既に上空は雲に覆われ日差しはなく、北よりの風が強まり雪が舞い始めた。西側の視界はかなり悪くなっており強い雪のエリアが接近しているようだ。風の避けられない山頂で休むのはパスして、稜線が風除けになり平坦地になっている1360mで休憩しようと出発することにした。

稜線から見た1360m平坦地 1360m平坦地。だだっ広い

 尾根を少し進んで右手に白い台地が接近したところで急斜面を斜めに下っていく。大きなブナが点在する斜面で木の数は少なく、スノーシューではピッケルを併用して慎重に下る必要があった。つぼ足ならばかかとを効かせて下れる場所だろう。下っているうちににわかに雪が強くなり周囲の視界がかなり制限されてしまった。これはまずい。予定では1090m標高点肩のある尾根を経由して林道に下ろうと考えていたが、ここは尾根は明瞭になるまでかなり複雑な地形を下らなければならず、視界が無い中で尾根に乗れるか非常に不安だった。まあ、適当に斜面を下ればどこかで林道にぶち当たるので細かいことを考えなくてもいいのだが。

僅かに尾根っぽい場所を下る 尾根がはっきりしてくる

 僅かに尾根っぽい場所を選んで下っていくと徐々に尾根がはっきりしてきたが進行方向は東を示していた。東向きで明瞭な尾根はこの付近では1262m峰につながる尾根しかない。ここはピークへの登り返しがあって無駄な体力を使うので使用を見送ったのだが、この状況下では文句は言えない。現在位置が分かる尾根を使うのが安全だろう。平坦地で休む予定だったのが視界を閉ざされた状況で疲れていたことを忘れてしまった。

1262m峰 1262m峰より下部で見られるマーキング

 鞍部からの登り返しは吹雪き模様で雪の上に新雪が積もり始めた。風が強く湿った雪で体に付着して濡れてしまいそうだ。1262m峰に到着すると明瞭なペイントの目印が登場し、下山方向だろうか矢印が書かれていた。私が下ろうと考えている尾根に導いてくれるのか不明なので、目印はあまり木にせず読図を正確にできるよう高度計を校正した。

マーキングの尾根を外れて東尾根へ入る 明瞭な尾根が続く
下部は杉植林 林道に出たところから尾根取り付きを見る

 磁石で方位を確認して南東に下り、1210mで左に下る尾根に乗り換える。赤ペイントはこのまま直進する尾根を指し示していたが、東に延びる尾根を下ったほうが少しだが林道を歩く距離を短縮できる。適度な傾斜の尾根で割と単純な地形なので視界が制限されても安心して歩けた。標高1100mで右に屈曲し、なおも高度を下げると自然林から杉の植林へと変貌、もう林道は近い。最後は沢のたもとで林道に出た。

 あとは林道を歩くだけ。とはいえ休憩するはずが歩き続けて少々お疲れモードで、重力の助けが無くなった水平移動は疲れた。やっと車が見えて心底ほっとした。他に車はなく道端のスノーモービルもそのままで、今日は私一人独占の山だった。

 

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